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長野地方裁判所 昭和47年(わ)43号 判決 1973年1月30日

本店所在地

長野県中野市中央一丁目一〇番一号

株式会社 ニコー

右代表者代表取締役

小林文治郎

本籍と住居

長野県中野市大字越四五七番地

会社役員

小林文治郎

大正一三年三月一〇日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官伊藤実出席して審理のうえ、次のとおり判決する。

主文

被告株式会社ニコーを罰金八〇〇万円に、被告人小林文治郎を懲役八月に処する。

被告人小林文治郎に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、長野県中野市中央一丁目一〇番一号に本店を置き、光学レンズの研磨と撮影機の製造を目的とする資本金七〇〇万円の株式会社であり、被告人小林文治郎は、被告会社の代表取締役としてその業務全体を統轄しているものであるが、被告人小林文治郎は被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一、昭和四三年二月一日から同四四年一月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得額が一一八、二〇二、四四八円で、これに対する正規の法人税額が三九、六九六、九〇〇円であるのにかゝわらず、架空労務費を計上し、期末棚卸を一部除外する等の不正手段により所得を秘匿したうえ、同四四年三月三一日、中野市中央一丁目五番二〇号信濃中野税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七五、八七二、九四二円で、これに対する法人税額が二四、八八五、八〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右事業年度の法人税額一四、八一一、一〇〇円を免れ

第二、昭和四四年二月一日から同四五年一月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が一四三、八四〇、八九六円で、これに対する正規の法人税額が四八、三七六、九〇〇円であるのにかゝわらず、右第一記載と同様の不正手段により所得を秘匿したうえ、同四五年三月三一日、右信濃中野税務署において、同税務署長に対し、所得金額が九八、〇七五、九三四円で、これに対する法人税額が三二、三六二、二〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税額一六、〇一四、七〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、被告会社代表者兼被告人小林文治郎の当公判廷における供述

一、被告人小林文治郎の検察官に対する各供述調書

一、池田四方吉(二通)、小野文子、小林厚の検察官に対する各供述調書

一、国税査察官作成の簿外預金調と題する書面

判示冒頭の事実につき

一、登記官吏作成の登記簿謄本

一、株式会社ニコー定款

判示第一、第二の各事実につき

一、冨田文雄、波切芳範、田中善造、小沢今朝光、小林光雄、小島治高の検察官に対する各供述調書

一、池田四方吉および小野文子作成の答申書

一、池田四方吉作成の答申書

一、小林厚作成の答申書(一)および(二)

一、押収してある賞与計算メモ(昭和四八年押二七号の三)

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官作成の証明書(一)

一、国税査察官作成の査察更正決議書(昭和四七年三月二二日作成)

一、押収してある給与支払明細表一二綴(昭和四七年押二七号の一)、同賞与一覧表二綴(同押号の四、六)同たな卸表六綴(同押号の八)、同申告利益調整メモ(同押号の一〇)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官作成の証明書(二)

一、国税査察官作成の査察更正決議書(昭和四七年一月二七日作成)

一、押収してある給与支払明細表一二綴(昭和四七年押二七号の二)、同賞与一覧表二綴(同押号の五、七、)同棚卸表五綴(同押号の九)

(法令の適用)

被告人小林文治郎の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項(七四条一項二号)に該当するところ、本件は、同被告人が終始指導的役割を果たしてきた大規模な違反事犯であること等に徴し、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において同被告人を懲役八月に処し、被告人株式会社ニコーに対しては法人税法一六四条一項により被告人小林文治郎の右各違反行為につき同法一五九条一項所定の罰金刑に科すべきところ、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告株式会社ニコーを罰金八〇〇万円に処し、被告人小林文治郎に対しては諸般の情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 大澤博)

右は謄本である。

昭和四八年三月五日

長野地方裁判所

裁判所書記官 伊藤隆雄

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